建築学で都市をデザインする!3D技術で守るまちの美しい景観
No.007

建築学で都市をデザインする!3D技術で守るまちの美しい景観

理工学研究科(工学系)建築学プログラム 博士前期課程2年才田 怜さん

「建築」と聞くと、皆さんはどんなイメージが浮かぶでしょうか?オシャレな家やビルを設計する姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。

でも実は、建築学の学びは多岐にわたります。今回は、「都市をデザインする」という視点のもと、建築物の高さ制限について研究している、博士前期課程2年の才田 怜さんにお話を伺いました。

建築物の高さ制限とは、何のために設定するものなのでしょうか?

それぞれの都市には、守りたい綺麗な景色が存在しています。

例えば、鹿児島市の城山展望台から望む桜島は、とても素敵な眺望ですよね。でも、もし私たちが展望台と桜島の間に巨大な高層建築物を作ってしまうと、視界が遮られて景観を損なってしまう問題が発生してしまいます。このような問題を防ぐために、「景観法」という法律が作られました。

景観法によって各市区町村は、具体的にどこの景観を守るのか、高さや見た目などをどう制限するかのルールを決めることができるようになりました。先ほど例に挙げた城山展望台からの眺望は、実際に建物が視線を遮らないように、鹿児島市の景観計画で高さ制限が設けられ、守られているんです。

 

街ごとに独自で作ることができる、景観を守るためのルールなんですね。

そうですね。つまり「街の景観は皆のものなので、ルールを決めましょう」という考え方です。このルールのうち、高さによる制限を設定する際には、どのくらいの高さまで許容できるのかを算定する必要があります。算定の仕方は街ごとに違うのですが、多いのは2次元の断面図を用いる手法ではないかと思います。

このような背景の中で、私が研究しているのは、「3次元データを活用した視点場からの高さ制限算定手法」です。簡単にいうと、近年発展してきている3D技術を用いて、数字的根拠に基づいた⾼さ制限を導き出そうというものです。事例として、鹿児島県にある自然豊かな離島、与論島のデータを使って検証を行っています。

 

具体的には、どのような作業をしているのですか?

まず、特定の地点から景色を眺める際、人が立つ地点(に人の目の高さを加えた点)を「視点場」、⼭並みなど見える景色の最高点を「稜点」とします。このとき、建物が稜点を遮らないことが大切ですので、視点場と稜点を結ぶラインを規制ラインとし、地面からラインまでの高さなら建物を建てられるという考え方を基本としています。

高さ制限の考え方

この分析を3Dで行うため、3Dモデリングソフトに国土地理院の地形データを読み込ませて作業していきます。地形データ上に視点場と、視点場から視認可能な稜点を複数取り、隣り合う二つの稜点と視点場で三角形をつくるんです。

これを360°同じように繰り返して整理していくと、規制ラインを面でとらえたメッシュ状の図形が出来上がります。これを「規制包絡面」とします。

あとは地面から規制包絡面までの高さを算出すれば、その高さまでなら建物を建てられることが分かる仕組みです。

規制包絡面を作成した後のデータ

 

研究のゴールはどんなところにあるのでしょうか?

実はこの研究は、私が学部学生の頃から行っていて、大学院でも引き継いでいるものなんです。学部学生の時には、この手法で与論島をモデルに分析するところまで研究を進めました。大学院生である今は、より細かいデータが得られるようにしたり、違う種類の地形データを使った場合でも使えるようにしたりといった改善を行っています。

今後さらに分析の精度を高めていって、最終的には他の土地で景観計画を作成する際の補助資料として広く活用できるようになるといいなと思っています。

 

学部学生の頃も今と同じ増留研究室に所属。
当時の卒業論文は、公益社団法人都市住宅学会九州支部で優秀賞を受賞しました!

 

才田さんの将来の目標についても教えてください!

現在、鹿児島県内の設計事務所から内定をいただいており、修了後は建築士として働く予定です。

高校時代は家を建てたいという思いから建築士に憧れ、鹿児島大学工学部に入りました。所属した増留研究室では、様々なジャンルの研究や活動が行われています。昔の建築家の資料を整理し建築手法を分析する研究や、地域の緑地公園に新たな価値を付加するためのイベント運営など…。これまでの研究室での学びを通して、建築が人に与える影響の大きさを実感しました。ただかっこいい建物を作るだけでなく、建物一つ一つが街並みを形づくる要素であると思っています。そのため将来的には、鹿児島に住む人々がより豊かになるような建築を通じて、まちづくりをしていきたいです。

増留研究室主催、谷山緑地公園で行ったアートイベント「緑月灯」。
学生たちが協力し合いながら運営を行っています。

研究室のメンバーで一枚。
先生も学生も、まるで正月に集まる親戚みたいに仲が良く、のびのび過ごせる研究室だと話してくれました!

 

(取材:広報サポーター 小園 亜依/馬渡 海月)