見た人が物語を広げられる作品を――油彩画で描く温かな世界
No.008

見た人が物語を広げられる作品を――油彩画で描く温かな世界

教育学部美術科2年椎原 麗南さん

 

県美展で受賞した絵画『ひらりふわり』をはじめ、人の温かさや美しさを感じられる作品づくりに取り組む教育学部美術科の椎原 麗南さん。今回は、美術との出会いや作品制作への思い、そして将来の夢についてお話を伺いました。

 

 

美術との出会いはいつ、どんなことでしたか?

絵を描き始めたのは中学生の頃、美術部に入部したことがきっかけでした。

ただ、当時は何となく入ったくらいの感覚でしたので、本格的に美術の道に進もうと考えるようになったのは、高校時代に出会った美術の先生の作品を見てからです。

その先生が描く綺麗な油彩画は、細かな描写まで丁寧に表現されており、その作品に強く心を動かされました。次第に美術の魅力に惹かれると同時に、その先生への憧れから教員という職業にも関心を抱くようになり、美術の制作と教員という夢の両方を実現できる環境として鹿児島大学教育学部美術科への進学を選びました。

 

普段はどのような作品を描いているのですか?

人物画です。主に、油彩で女性画を描いています。

身体の丸みや肌の質感など、女性ならではの美しさに魅力を感じて女性を描くようになりました。

髪の毛一本一本まで描き込むような細かな表現も好きで、丁寧に描写を重ねていく時間そのものが楽しいと感じます。

作品のアイデアは、通学中の景色や音楽、展覧会で出会った作品から得ることが多いです。音楽を聴きながら「こんな雰囲気の絵を描きたい」とイメージを膨らませることもあります。

 

 

1枚の絵はどのような工程でできあがるのでしょうか?

制作の際は、完成した作品を想像しながら逆算するように進めています。表現の可能性を広げるために、こうしたらもっと面白くなるのではないか、と常に試行錯誤することが制作の醍醐味です。

例えば、作品「ひらりふわり」では、鏡や窓の外から人の気配を感じられるように工夫し、奥域のある世界観を表現しました。具体的には、まず墨汁で下描きを行い、その上から油を一層塗布した後、白と黒で明暗を繰り返し描き込み、その上から着彩するという工程で進めました。作品全体を温かみのあるオレンジや茶でまとめながらも、下層には青色を重ねることで透明感を生み出し、色彩に奥行きと深みを持たせています。表現を試行錯誤し、一つ一つの工程を丁寧に積み重ねることで、作品のテーマである「あたたかさ」や「優しい時間の流れ」を表現しました。

まずは白と黒での書き込みし(左)、完成イメージカラーの補色である青色で着彩(右)。

色を重ねていく様子。壁の木目やかごの網目などの細かい書き込みにもこだわりました。

 

制作において椎原さんが大切にしていることはなんですか?

作品を見た人が優しい気持ちになれる温かさ、そして続きのストーリーを想像できるような作品を意識して制作しています。

鑑賞者によって異なる解釈が生まれることが楽しく、自分では想像していなかった物語が作品から読み取られたとき、新たな発見があります。

完成した作品を見る人が、それぞれの経験や感情を重ねながら物語を広げていく。そんな余白のある表現を目指しています。

 

お話から、椎原さんの繊細で深く、温かな感性が伝わってきました。ずばり、椎原さんにとって美術とはなんですか?

「言語の一種」だと考えています。

言葉ではうまく説明できない感情や空気感、心の動きも、絵であれば表現できることがあります。絵には、言葉だけでは伝えきれないものを届ける力がある。だからこそ制作を続けていきたいです。

 

 

最後に、椎原さんの今後の目標について教えてください!

まずは制作を重ねて、実績を積んでいきたいです。ゼミに所属できるのは3年生からになるので、まだ正式に研究室には所属していませんが、自主的に絵画研究室の活動に参加し、先生の指導を受けています。研究室の作品制作に集中できる環境や、先輩や仲間と支え合いながら学べる温かな雰囲気にも魅力を感じています。

将来の目標は、美術の教員になることです。しかし、教員になることがゴールではなく、教師になった後も制作活動を続け、自分自身も表現者であり続けたいと考えています。
自分の作品が、美術という枠を超えて、生徒たちに何らかの形で影響を与えられたら嬉しいです。

 

 

編集後記

見る人それぞれが自由に物語を紡げる作品を目指して――。椎原さんの表現は、これからも多くの人の心に優しい余韻を残していくことでしょう。

(取材:広報サポーター/ 高宗杏衣)