昆虫を食料問題の希望に!大学院生と会社経営の二足の草鞋
No.006

昆虫を食料問題の希望に!大学院生と会社経営の二足の草鞋

連合農学研究科 農水生命科学専攻 博士課程1年藤田 匠さん



鹿児島大学、佐賀大学、琉球大学が連合した農水産学系の大学院である連合農学研究科。
その連合農学研究科に所属し、「昆虫の食料・飼料利用」の研究に取り組み、昆虫の産業利用を行う会社も経営している、社会人学生の藤田さんにお話を伺いました。

昆虫への興味はどこから生まれたのでしょうか?

元々、小さい頃から昆虫が大好きでした。格好良いのが魅力ですよね。カブトムシなんて特にそうだと思います。
学部と修士は他大学で、農業分野の病害虫防除の研究をしていました。当時は農業の側面から昆虫を見ていたので、「昆虫=防除」という考えを持っていました。

その考えが大きく変わったきっかけとなったのは、2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が出した食料安全保証に関する報告書でした。その中で、急増する人口と環境問題の解決策の一つとして、栄養価が高く環境負荷の低い昆虫食の展望が示されました。

当時はまだ昆虫食が一般に認知される前でしたので、「食べられるのか!!」という衝撃とともに、その可能性に強く惹かれました。

沖縄県に生息するカブトムシ「サイカブト」
サイのような格好良く短い角が特徴です。

その衝撃が、連合農学研究科への進学に繋がったのですね。

そうですね。修士課程修了後は企業の研究職として働きながら、昆虫食の普及・啓蒙に取り組むNPO法人にも所属し、試食イベントや勉強会に参加してきました。

仕事で沖縄に移り住んだタイミングで、これまでインプットしてきた昆虫食の知見をアウトプットしていきたいと考え、自身で昆虫の産業利用を目指す会社を起業し、同時に昆虫の安全な食料・飼料利用を提唱していくには「食べられる」というだけではなく、安全性や栄養価といった科学的な根拠を示していく必要があることから、学際的な研究に取り組める連合農学研究科に進学しました。

藤田さんが研究で活用する昆虫のうちの一種
「ヤシオオオサゾウムシ」の幼虫と成虫

起業した会社(琉球昆虫株式会社)の商品。
東南アジアを中心に多くの国と地域で食べられている「ヤシオオオサゾウムシ」の幼虫をフリーズドライ加工した昆虫食で、独自の加工技術により、昆虫が持つ旨味をしっかりと感じられるのだそうです!

連合農学研究科では、どのような研究を行なっているのでしょうか?

昆虫学、栄養学、水産学の分野を横断し、2つの研究に取り組んでいます。
1つ目は、「昆虫飼料が魚の成長に与える生理・生態的研究」です。タンパク質を豊富に含む昆虫を粉末化させ、ビタミンやミネラルなどと混ぜ合わせて配合飼料を作ります。その飼料を試験魚に給餌させ、成長速度や行動変化に問題がないかの安全性の確認や、昆虫に含まれる栄養分析などを行い、従来の魚粉由来飼料との比較検証を行っています。

2つ目は、「未利用資源を活用した循環型食料生産モデルの構築」に関する研究です。本来なら破棄されてしまう農業・食料残渣、魚の排泄物などを栄養源に昆虫を育て、育てた昆虫を今度は魚の飼料にするというものです。沖縄の方言でミーバイと呼ばれる、魚のハタを使って実験を行っていく予定です。地域から出る未利用資源を活用して昆虫を育て、それを飼料化させてミーバイに食べさせる。…昆虫を介すことで、廃棄されるはずのものからタンパク質を作り出し、巡り巡って人間の食料にできれば魅力的ですよね。

食料自給率やフードロスなど、様々な問題の解決の一手となり得る研究ですね!

日本の食料自給率(※)は38%と低い水準です。そんな中、小規模で比較的簡単に飼育ができる昆虫は、食料・飼料の課題解決に貢献が期待できるのではないかと考えています。研究や事業の拠点がある沖縄は、年間を通して温暖な気候に恵まれることから昆虫を育てやすい環境ですし、畜産県である鹿児島は、昆虫も畜産動物の1つという認識を広げやすいのではないかと思います。
日本における昆虫事業は、まだ産業と呼べる規模に達していないのが現状ですが、昆虫も限りある資源の一つとして捉え、防除ではなく有効利用していくために、今後様々な専門家と繋がっていきながら「昆虫産業」を創出していきたいです!

起業した会社は今年度「鹿児島大学認定ベンチャー」の称号を付与していただいたので、今後は鹿児島・沖縄の南西諸島域で広く活動していくとともに、大学での研究活動を通じてより良い社会の実現を目指していきたいです!

※農林水産省公表値より、令和6年度のカロリーベースによる食料自給率。